日々の日常的なことから、アニメなどの感想を取扱おうかな、と考えています。
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つい(ry
「お前は何故に父を憎む?」
何で憎むか、だと?
「お前に何がわかる?」
極めて平静を装ったつもりだった。
しかし、拳は正直に血を流していた。
力をいれすぎた……
「憎しみは虚しい連鎖を生むだけだぞ」
またシルエットになって隠れやがった。
だから、なんだ……
「うるせえってんだよ!」
思いっきり拳を突き出す。
何かに当たった感触はない……わけでもない。
「痛いですよ…?」
微妙に青筋を浮かべる天がいた。
鼻からは赤いものを流しながら……
「ワリ……」
「気は済みましたか?」
怒ってる……
怒ってますよ、これは……
「全く話だけでこんなですから本物に対してはどれほどなのか……」
呆れられた……
けど怒ってない……
「もう何も言いませんよ」
それだけで戻っていった。
わけでもなく、立ち去り際に振り返る。
「此方も少し昔話をしましょうか」
「なんだ、突然?」
「いえ、何となくね」
少し笑われて少し退く。
それでも気にせずに話を始める。
「私の家は代々霊媒師の仕事をしてるんです。しかし、私の父は家業を継がずに家出しました」
俺でも同じ行動するだろう。
「その後、父は寺に戻ってきたものの、お見合いのため無理矢理……相手は私の母で、当代の霊媒師です」
つまり、別から引っ張ってきたわけだ。
「そして、また父は旅に出ました」
終わり……じゃないな。
「けれど、父は旅先からいつも手紙を送ってくれます。自由を掴めとね」
「良い親父さんじゃねえか、羨ましいぜ?」
「どこがですか? 責任押しつけるだけで会いもせずに手紙だけですよ?」
さりとて、穏やかな顔だ。
言うほど怒ってない。
そりゃそうだ……
「生き方を教えてくれて、愛情もある」
その会話の最中、天は思う。
余計に失敗だったと……
「アナタの父親は……何をしたんですか?」
途中躊躇う素振りを見せもしたがはっきりと聞いてしまった。
もはやストレートに聞く以外には方法がない。
一度は放っとくと決めたものの、やはり聞くべきだと判断する。
一種の諦め=ダメ元
「何を? 何もやってねえよ」
「親だと認めてない、ということですか?」
「さぁてね」
鋭い眼光はこれ以上の詮索をするな、そう訴える。
覚えず退く天は口を開けなかった。
「死んだとでも思っとけ」
最後の言葉は脅しだろう。
これ以上は聞くべきではない?
それは違う。
何故か確信が持てた。
根拠はない。
でも……
「母親を殺された、のですか?」
瞳が凝縮され驚いている。
山勘でも当たったらしい。
「それは父親のせい?」
「それ以上何か言ったら殺す」
濃厚な殺気を放つ彼を見て、
激しく怒る彼を見て……
天は恐れなかった。
これは退けない。
退くわけにはいかない。
そう、思って……
「そして、父親はどこかへ消えた?」
「殺すつってんだろ!?」
襟元を掴まれ壁に叩きつけられ痛みに襲われながら、天はただ彰を睨む。
部屋のメンバーは驚き慌てながら右往左往するのみで何もしない。
今までの会話を聞いておらず、状況を理解できずにいる。
「先生には報告せず、外に出ててください。私が何とかしますので」
「黙れ!」
拳が頬に直撃。
眼鏡が吹っ飛ぶ。
それを見て他のメンバーは部屋を飛び出していった。
「アナタは父親が憎いんですか?」
再びの拳。
口に鉄の味が広がり、嫌な臭気が鼻をつく
「テメエも白虎も俺の気持ちがわかるもんか!」
最後の一発は顎に決まる。
重い……
けど、引き下がれない。
「アナタは間違ってる」
「だとしてもお前に関係ない!」
投げ捨てられ、一気に距離が開く。
まるで今の自分と彰のようだと思いながら天は瞳に鋭さを持たせる。
最後の言葉は決まっている。
「逃げんな馬鹿野郎!」
初めて聞く天の暴言。
天としても初めてだった。
彰はムカついて外に走り出した。
牛鬼との決闘の場へ。
「ついてくんな白虎!」
「そのような訳にもいくまい、我が汝を選んだからには見送る」
「チッ、勝手にしろ」
「勝手にします」
何だかんだ天も来ていた。
点呼は済ませたようだ。
「嘘をついたのか……」
「当たり前です」
口の血は拭き取られているし。
「つまらないことで鬼をほっとくわけにもいきませんからね」
「なら礼は言わないぞ」
頷かれ余計に足を速める。
時間は未だ10時。
3時間も早い……
しかし――
「牛鬼の指定した場所はここか……」
彰には確信も、根拠もあった。
その理由が目の前にいる。
「白虎、天……お前らは下がれ、これは俺の闘いだ」
暗がりから出て来る大男を見ながら、憎たらしい過去が甦る。
「よお、久し振りだな」
月明かりに照らされる大男の姿を目にいれながら彰は冷静に呟く。
「――親父」
思考が停止していた。
これが、彰の父親?
見た目からわかることは幾つかある。
まず一つに、この男はかなり強い。
そしてデカい。
二つ目に、コイツは牛鬼に操られていること。
三つ目に、かなりの距離を歩いてきただろうこと。
四つ目に、コイツに関わってはいけないこと。
関われば殺される。
何より、彰の父親なのだ。
天も白虎も下がった。
決着は二人にしかつけられない。
「俺はお前に母ちゃんを殺されてから、ずっとお前に勝つことを目指した」
彰が構える。
右手足を引き、左手足を前に出す。
対する父親も同じ構え。
今この二人に存在する違いはリーチ。
静かに時が過ぎる。
木につく木の葉がざわめく。
風が吹き抜ける。
それ程度音とはせず、黙々と構えを解かず動かない。
空間に緊張をはしらせる。
天はこれほどの緊張を味わったことはなかった。
それは今まで経験したどの試合よりも緊張した、させられた。
今にも闘気が目に見えそうなほど濃密な気迫が襲い掛かる。
それには憎しみ、怒り、殺意など微塵もない。
実物を目の前にする彰の態度にしては些か妙。
しかし考えてる余裕は天にも白虎にも存在しない。
ただ目の前に集中するのみ。
気は抜いてない筈だった。
なのに、気づけば二人は拳をぶつけ合っていた。
そして急ぎ離れ片足が地面につくと同時に再び肉迫。
彰の拳を下段の回し蹴りをしながら避ける父親。
それを転けるように身を捻り、紙一重で避ける彰。
そこへ更に左足で追撃しようとする父親。
左手で掴み地面についた右手を軸に投げ飛ばす彰。
父親は木にぶつかる直前に受け身をとり無傷で着地した。
たった数秒なのに動きが多すぎる。
なんだこの二人は……
「黒憐流武術の開祖とその息子だよ」
彰が一瞬の余裕に答える。
その隙を逃すまいと迫る父親。
黒憐流武術?
聞いたこともない。
開祖が父親ということは最近開かれた?
ならば当然だろう。
「テメエは三日坊主になんじゃねえ!」
回し蹴り、回し蹴り、蹴り上げ、踵落とし、裏拳、膝蹴り、肘打ちと流れるような動きを見せながら肘打ち以外掠りもしない。
全く完璧な避け方。
無駄がない。
けれども攻め込めないのは彰の攻めに隙がないから。
「俺はお前と違って積み重ねてきた」
やっと一発。
左のフックが頬を捉えた。
大したダメージにはならないだろうが直撃は直撃。
「俺は勝っても免罪符にはしない」
過去の精算は出来ないことは知ってる。
元より繰り返さないための鍛錬だった。
「豚箱には入ってもらうがな!」
フックでよろめく父親に蹴りを叩き込む。
思いきり木に叩きつけられる。
「終わりじゃねえんだろ?」
口を開く度怒気が籠もりつつあった。
やはり思い出すと苛つく。
何に……?
決まってる……
「彰ぁ――」
しかし、糸が切られ自我を取り戻した父親の声に遮られる。
「――久し振りじゃぁないかぁ……」
全く普通の言葉。
先刻己も言ったようなセリフだ。
「失せろ、屑」
声を聞いたらもう自分が自分でなくなっていた。
頭が真っ白で殺気が立ちこめるのに気づいていなかった。
その後は速かった。
下段回し蹴り同士でぶつかり合う。
その衝撃を利用するでもなく無視して体を捻って左足での上への蹴りが再び激突。
互いにぶつかり合う脚を引き戻して体勢を立て直す、暇もなく互いの拳をぶつからせる。
鈍い音を聞きながら蹴り。
互いの足裏がぶつかり弾き合う。
「強くなったじゃぁないかぁ、彰ぁ」
舌を出し汚い涎を流す大男。
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。
「さっさとしやがれ!」
拳の連打。
正確にぶつかり合い弾き合う。
まるで分かり合えない家族のように。
「楽しいなぁ、彰ぁ!?」
「つまんねえよ!」
更に速くなる拳と蹴りの応酬。
攻めては相打ち、次第に積もりゆく四肢の痛み。
しかし、その痛みも痛みとせずただ動き続ける。
「オイ」
しかし動きを止め声をかける。
気づけば30分という時間が経っていた。
観戦を決め込んでいた白虎も天も全く飽きていなかった。
「なんだぁ、彰ぁ?」
「次の一発で終わりにしねえか?」
立ち込める殺気をようように抑えて彰が提案する。
ラスト一発。
応じる代わりに気合いを高める父親。
イエスと受け取り彰もまた気合いを入れる。
人がこれを例えて言うならば鬼神と悪鬼のようだと言うだろう。
それほどに恐ろしく、また目を離したくなかった。
好奇心に人は勝てない。
何故なら人だけが持つ特別な気持ちで恐怖をも抑制してしまうからだ。
やがて二人が動き出す。
父親の拳に対して彰も拳。
今互いにぶつかり合おうという瞬間――
父親の拳は空を殴り体勢を崩す要因に。
その隙に強烈な踵落としを後頭部に決める彰。
結末とはあまりに呆気ない。
――そして、彰はズルい。
最後は全力になると分かっていながら持ち出し、最後の相手の攻撃を避け、その際に生じる絶大な隙に叩き込む。
「俺の勝ちだ」
二発の衝撃が後頭部に響く。
「何が“俺の勝ちだ”ですか!?」
「貴様、最後ぐらい真面目に取り合うのが仁義であろうが!!」
その衝撃の正体がこの二人。
今まで観戦していた白虎と天だ。
「うるせえ、これ以上遊んでたらマジで殺っちまうだろ」
しかし、彰の放つ殺気に再び黙り込む。
普段からは考えられない殺気だ。
「しかし、何故殺さなかったのです?」
「何で殺す必要がある?」
質問に対して質問で返す。
さっぱり意味が分からなかった。
「汝は父を憎んでいたのではないのか?」
「俺は――」
言いかけて止める。
父親が立ち上がったからだ。
「どこまで逝かれてんだよ」
再び構える。
だが、何か妙だ。
既に牛鬼の糸は切れている筈。
なのに何かに操られているようだ。
「彰ぁ……」
「…………。牛鬼、出てきやがれ」
左斜め後方を睨みつけながら怒り口調になる彰。
その先には牛鬼が。
「なんじゃ、気づいておったのか」
仕方なしにバキバキと枝を折って近づく牛鬼。
それを爪を出しながら見る彰。
時12時。
「親父に何をした?」
「何、儂の一部になったまでよ」
嘲笑うように見えたその牛鬼を彰はより鋭い目で睨む。
コイツはやること全てイラつく。
「ふざけんじゃねえ!」
盛大な声が空気を振動させる。
全くの怒りを込めた言葉。
聞けば大抵は竦みあがる。
しかし、牛鬼は物ともせず動かない。
その隙に後ろから襲い掛かる父親。
「させません」
そして、それを木刀で止める天。
まだ見ぬその力は如何なるものか?
「本体は任せますが、こちらは私が」
「彰ぁ……!」
繰り出される連打を木刀でたたき落としていく。
どうやら防ぐだけならいくらでも平気そうだ。
「テメエは殺る!」
こちらも爪で攻め続ける。
牛鬼は全て跳んで屈んで右左と避ける。
しかし、彰のその有り様はまるで獣。
血に飢えるが如く攻め続ける。
何で憎むか、だと?
「お前に何がわかる?」
極めて平静を装ったつもりだった。
しかし、拳は正直に血を流していた。
力をいれすぎた……
「憎しみは虚しい連鎖を生むだけだぞ」
またシルエットになって隠れやがった。
だから、なんだ……
「うるせえってんだよ!」
思いっきり拳を突き出す。
何かに当たった感触はない……わけでもない。
「痛いですよ…?」
微妙に青筋を浮かべる天がいた。
鼻からは赤いものを流しながら……
「ワリ……」
「気は済みましたか?」
怒ってる……
怒ってますよ、これは……
「全く話だけでこんなですから本物に対してはどれほどなのか……」
呆れられた……
けど怒ってない……
「もう何も言いませんよ」
それだけで戻っていった。
わけでもなく、立ち去り際に振り返る。
「此方も少し昔話をしましょうか」
「なんだ、突然?」
「いえ、何となくね」
少し笑われて少し退く。
それでも気にせずに話を始める。
「私の家は代々霊媒師の仕事をしてるんです。しかし、私の父は家業を継がずに家出しました」
俺でも同じ行動するだろう。
「その後、父は寺に戻ってきたものの、お見合いのため無理矢理……相手は私の母で、当代の霊媒師です」
つまり、別から引っ張ってきたわけだ。
「そして、また父は旅に出ました」
終わり……じゃないな。
「けれど、父は旅先からいつも手紙を送ってくれます。自由を掴めとね」
「良い親父さんじゃねえか、羨ましいぜ?」
「どこがですか? 責任押しつけるだけで会いもせずに手紙だけですよ?」
さりとて、穏やかな顔だ。
言うほど怒ってない。
そりゃそうだ……
「生き方を教えてくれて、愛情もある」
その会話の最中、天は思う。
余計に失敗だったと……
「アナタの父親は……何をしたんですか?」
途中躊躇う素振りを見せもしたがはっきりと聞いてしまった。
もはやストレートに聞く以外には方法がない。
一度は放っとくと決めたものの、やはり聞くべきだと判断する。
一種の諦め=ダメ元
「何を? 何もやってねえよ」
「親だと認めてない、ということですか?」
「さぁてね」
鋭い眼光はこれ以上の詮索をするな、そう訴える。
覚えず退く天は口を開けなかった。
「死んだとでも思っとけ」
最後の言葉は脅しだろう。
これ以上は聞くべきではない?
それは違う。
何故か確信が持てた。
根拠はない。
でも……
「母親を殺された、のですか?」
瞳が凝縮され驚いている。
山勘でも当たったらしい。
「それは父親のせい?」
「それ以上何か言ったら殺す」
濃厚な殺気を放つ彼を見て、
激しく怒る彼を見て……
天は恐れなかった。
これは退けない。
退くわけにはいかない。
そう、思って……
「そして、父親はどこかへ消えた?」
「殺すつってんだろ!?」
襟元を掴まれ壁に叩きつけられ痛みに襲われながら、天はただ彰を睨む。
部屋のメンバーは驚き慌てながら右往左往するのみで何もしない。
今までの会話を聞いておらず、状況を理解できずにいる。
「先生には報告せず、外に出ててください。私が何とかしますので」
「黙れ!」
拳が頬に直撃。
眼鏡が吹っ飛ぶ。
それを見て他のメンバーは部屋を飛び出していった。
「アナタは父親が憎いんですか?」
再びの拳。
口に鉄の味が広がり、嫌な臭気が鼻をつく
「テメエも白虎も俺の気持ちがわかるもんか!」
最後の一発は顎に決まる。
重い……
けど、引き下がれない。
「アナタは間違ってる」
「だとしてもお前に関係ない!」
投げ捨てられ、一気に距離が開く。
まるで今の自分と彰のようだと思いながら天は瞳に鋭さを持たせる。
最後の言葉は決まっている。
「逃げんな馬鹿野郎!」
初めて聞く天の暴言。
天としても初めてだった。
彰はムカついて外に走り出した。
牛鬼との決闘の場へ。
「ついてくんな白虎!」
「そのような訳にもいくまい、我が汝を選んだからには見送る」
「チッ、勝手にしろ」
「勝手にします」
何だかんだ天も来ていた。
点呼は済ませたようだ。
「嘘をついたのか……」
「当たり前です」
口の血は拭き取られているし。
「つまらないことで鬼をほっとくわけにもいきませんからね」
「なら礼は言わないぞ」
頷かれ余計に足を速める。
時間は未だ10時。
3時間も早い……
しかし――
「牛鬼の指定した場所はここか……」
彰には確信も、根拠もあった。
その理由が目の前にいる。
「白虎、天……お前らは下がれ、これは俺の闘いだ」
暗がりから出て来る大男を見ながら、憎たらしい過去が甦る。
「よお、久し振りだな」
月明かりに照らされる大男の姿を目にいれながら彰は冷静に呟く。
「――親父」
思考が停止していた。
これが、彰の父親?
見た目からわかることは幾つかある。
まず一つに、この男はかなり強い。
そしてデカい。
二つ目に、コイツは牛鬼に操られていること。
三つ目に、かなりの距離を歩いてきただろうこと。
四つ目に、コイツに関わってはいけないこと。
関われば殺される。
何より、彰の父親なのだ。
天も白虎も下がった。
決着は二人にしかつけられない。
「俺はお前に母ちゃんを殺されてから、ずっとお前に勝つことを目指した」
彰が構える。
右手足を引き、左手足を前に出す。
対する父親も同じ構え。
今この二人に存在する違いはリーチ。
静かに時が過ぎる。
木につく木の葉がざわめく。
風が吹き抜ける。
それ程度音とはせず、黙々と構えを解かず動かない。
空間に緊張をはしらせる。
天はこれほどの緊張を味わったことはなかった。
それは今まで経験したどの試合よりも緊張した、させられた。
今にも闘気が目に見えそうなほど濃密な気迫が襲い掛かる。
それには憎しみ、怒り、殺意など微塵もない。
実物を目の前にする彰の態度にしては些か妙。
しかし考えてる余裕は天にも白虎にも存在しない。
ただ目の前に集中するのみ。
気は抜いてない筈だった。
なのに、気づけば二人は拳をぶつけ合っていた。
そして急ぎ離れ片足が地面につくと同時に再び肉迫。
彰の拳を下段の回し蹴りをしながら避ける父親。
それを転けるように身を捻り、紙一重で避ける彰。
そこへ更に左足で追撃しようとする父親。
左手で掴み地面についた右手を軸に投げ飛ばす彰。
父親は木にぶつかる直前に受け身をとり無傷で着地した。
たった数秒なのに動きが多すぎる。
なんだこの二人は……
「黒憐流武術の開祖とその息子だよ」
彰が一瞬の余裕に答える。
その隙を逃すまいと迫る父親。
黒憐流武術?
聞いたこともない。
開祖が父親ということは最近開かれた?
ならば当然だろう。
「テメエは三日坊主になんじゃねえ!」
回し蹴り、回し蹴り、蹴り上げ、踵落とし、裏拳、膝蹴り、肘打ちと流れるような動きを見せながら肘打ち以外掠りもしない。
全く完璧な避け方。
無駄がない。
けれども攻め込めないのは彰の攻めに隙がないから。
「俺はお前と違って積み重ねてきた」
やっと一発。
左のフックが頬を捉えた。
大したダメージにはならないだろうが直撃は直撃。
「俺は勝っても免罪符にはしない」
過去の精算は出来ないことは知ってる。
元より繰り返さないための鍛錬だった。
「豚箱には入ってもらうがな!」
フックでよろめく父親に蹴りを叩き込む。
思いきり木に叩きつけられる。
「終わりじゃねえんだろ?」
口を開く度怒気が籠もりつつあった。
やはり思い出すと苛つく。
何に……?
決まってる……
「彰ぁ――」
しかし、糸が切られ自我を取り戻した父親の声に遮られる。
「――久し振りじゃぁないかぁ……」
全く普通の言葉。
先刻己も言ったようなセリフだ。
「失せろ、屑」
声を聞いたらもう自分が自分でなくなっていた。
頭が真っ白で殺気が立ちこめるのに気づいていなかった。
その後は速かった。
下段回し蹴り同士でぶつかり合う。
その衝撃を利用するでもなく無視して体を捻って左足での上への蹴りが再び激突。
互いにぶつかり合う脚を引き戻して体勢を立て直す、暇もなく互いの拳をぶつからせる。
鈍い音を聞きながら蹴り。
互いの足裏がぶつかり弾き合う。
「強くなったじゃぁないかぁ、彰ぁ」
舌を出し汚い涎を流す大男。
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。
「さっさとしやがれ!」
拳の連打。
正確にぶつかり合い弾き合う。
まるで分かり合えない家族のように。
「楽しいなぁ、彰ぁ!?」
「つまんねえよ!」
更に速くなる拳と蹴りの応酬。
攻めては相打ち、次第に積もりゆく四肢の痛み。
しかし、その痛みも痛みとせずただ動き続ける。
「オイ」
しかし動きを止め声をかける。
気づけば30分という時間が経っていた。
観戦を決め込んでいた白虎も天も全く飽きていなかった。
「なんだぁ、彰ぁ?」
「次の一発で終わりにしねえか?」
立ち込める殺気をようように抑えて彰が提案する。
ラスト一発。
応じる代わりに気合いを高める父親。
イエスと受け取り彰もまた気合いを入れる。
人がこれを例えて言うならば鬼神と悪鬼のようだと言うだろう。
それほどに恐ろしく、また目を離したくなかった。
好奇心に人は勝てない。
何故なら人だけが持つ特別な気持ちで恐怖をも抑制してしまうからだ。
やがて二人が動き出す。
父親の拳に対して彰も拳。
今互いにぶつかり合おうという瞬間――
父親の拳は空を殴り体勢を崩す要因に。
その隙に強烈な踵落としを後頭部に決める彰。
結末とはあまりに呆気ない。
――そして、彰はズルい。
最後は全力になると分かっていながら持ち出し、最後の相手の攻撃を避け、その際に生じる絶大な隙に叩き込む。
「俺の勝ちだ」
二発の衝撃が後頭部に響く。
「何が“俺の勝ちだ”ですか!?」
「貴様、最後ぐらい真面目に取り合うのが仁義であろうが!!」
その衝撃の正体がこの二人。
今まで観戦していた白虎と天だ。
「うるせえ、これ以上遊んでたらマジで殺っちまうだろ」
しかし、彰の放つ殺気に再び黙り込む。
普段からは考えられない殺気だ。
「しかし、何故殺さなかったのです?」
「何で殺す必要がある?」
質問に対して質問で返す。
さっぱり意味が分からなかった。
「汝は父を憎んでいたのではないのか?」
「俺は――」
言いかけて止める。
父親が立ち上がったからだ。
「どこまで逝かれてんだよ」
再び構える。
だが、何か妙だ。
既に牛鬼の糸は切れている筈。
なのに何かに操られているようだ。
「彰ぁ……」
「…………。牛鬼、出てきやがれ」
左斜め後方を睨みつけながら怒り口調になる彰。
その先には牛鬼が。
「なんじゃ、気づいておったのか」
仕方なしにバキバキと枝を折って近づく牛鬼。
それを爪を出しながら見る彰。
時12時。
「親父に何をした?」
「何、儂の一部になったまでよ」
嘲笑うように見えたその牛鬼を彰はより鋭い目で睨む。
コイツはやること全てイラつく。
「ふざけんじゃねえ!」
盛大な声が空気を振動させる。
全くの怒りを込めた言葉。
聞けば大抵は竦みあがる。
しかし、牛鬼は物ともせず動かない。
その隙に後ろから襲い掛かる父親。
「させません」
そして、それを木刀で止める天。
まだ見ぬその力は如何なるものか?
「本体は任せますが、こちらは私が」
「彰ぁ……!」
繰り出される連打を木刀でたたき落としていく。
どうやら防ぐだけならいくらでも平気そうだ。
「テメエは殺る!」
こちらも爪で攻め続ける。
牛鬼は全て跳んで屈んで右左と避ける。
しかし、彰のその有り様はまるで獣。
血に飢えるが如く攻め続ける。
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プロフィール
HN:
時流
年齢:
32
性別:
男性
誕生日:
1992/12/07
職業:
学生
趣味:
小説を書く
自己紹介:
時流です。
突然、古臭い言葉遣いになったり、暴走します。
でも、最低限のマナーを守るようには勤めてます。
それに小説&絵をかきます。
どちらも下手ですが、頑張ってHPにupします。
よければ見てやってください。
突然、古臭い言葉遣いになったり、暴走します。
でも、最低限のマナーを守るようには勤めてます。
それに小説&絵をかきます。
どちらも下手ですが、頑張ってHPにupします。
よければ見てやってください。
カテゴリー
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