日々の日常的なことから、アニメなどの感想を取扱おうかな、と考えています。
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つ(ry
4月20日 AM05:00
太陽が昇り始めたのか空が明るくなりだす。
それを見て少年は思っていた。
今日で最後にしよう……、と。
そして話は二日前に遡る。
4月18日 AM11:30
少年・彰(アキラ)は新入生キャンプをしにとある宿に来ていた。
当然沢山の人がきている。
まずは宿の支給された部屋にいき荷物を置いて指示された部屋に移動を始める。
その途中、宿の看板を見つけた。
特に何の変哲もない看板に目を引かれたのは看板の下にある木が龍に見えたからだ。
その際に『五行思想に於いて龍(青龍)は木だからな』などと考え宿に些か親しみを感じた。
のも束の間、一歩進んだら龍がただの変哲もない木に変わっていた。
『己の未熟を恨むべきか、木の紛らわしさに怒るべきか……?』と考え直しその場を後にした。
「では、これより新入生キャンプ開講式を始めます。そもそもこのキャンプの目的とは―――」
30分経過。
「皆さんには宿の方に失礼のないように―――」
更に30分。
「ではそれぞれの部屋に移りましょう。くれぐれも―――」
更に30分経過。
「以上に注意してこれからの三日間を過ごすように」
長いよ、挨拶ごときにこんなに時間かけないで、と生徒達は思っていた。
して、やっと部屋に入る事が出来たわけだが……
――ぱっとしないメンバーだなぁ……
退屈というのは時間の流れを遅く感じさせる。
沈黙というつまらない時間を要して、やっときた夕食の時間。
移動を開始するが、周りにはぱっとしないメンバーばかり集まる。
――あれか、俺は呪われてんだな
しかし、その方が都合が良くなったのが風呂の時間から。
何でもない移動の最中だ。
虎のようなシルエットが道の上にあった。
しかし、実際そこには何もなく、空間だけがあった。
――疲れてんのかな?
「そうだな、お前は憑かれている」
ビクッと体が跳ねる。
シルエットから声がした。
何事?
「案ずるな、お前に使命をやろうというだけだ」
ずいとシルエットが近づくと何か衣が脱げるように頭から白く色がつき始める。
「まずは初めましてと言うべきだな」
「おぅ、初めまして」
とうとう俺も頭がどうにかしたらしい。
しかも虎と話して……
虎の色は、基本的に黄色と茶色だったような……
んじゃ、目の前のコイツは?
白と黒、それに瞳が黄色くて……?
「白虎!?」
「さよう白虎だ」
西方を守護する獣の神。
「して汝の名は何と申す?」
「俺は白川 彰」
「では彰よ、汝にはこの土地に迷い込んだ鬼を討伐してもらう」
選択権なし。
どうせ退屈だったので受けようとは思っていたが選択権はほしかった。
――……ん? この地に迷い込んだ鬼?
――“この地に”?
「簡単に見つけられるの?」
「無理だな、我が管理する二つの世界を行き来する能力を持ったのだ、そう簡単に見つかるものでもない」
余計に絶望的。
つまり、俺は残り二日……いやほぼ一日だけで見つけ出し、処理……
「俺じゃなきゃダメ?」
「我を見た以上はそうなる」
秘密にするためか……。
寝れない夜を二日間は過ごすだろう。
とりあえず、今日はボチボチ消灯時間。
積もる疑問は後にしてひとまず部屋に戻ろう。
「後で外に出て来る」
それだけで白虎は意味を悟るだろう。
とりあえず部屋に戻る。
点呼はこの部屋の最も地味な室長がする。
先生の確認が済んで消灯する。
ここの室長は真面目なようで先生が出た直後に電気を消していた。
部屋のメンバー全員が真面目で消灯して僅か数分で寝ていた。
ようようと外に出る。
勿論部屋に何もしないわけにもいかないため布団を丸めて布団の中に詰めた。
「抜け出してきたようだな」
再びシルエットのようなものから出て来る白虎。
「そんじゃとりあえず森の方に行って話そうか」
「構わんぞ」
ということで森の方へと移動する。
無論先生などに見つからないように気をつけて。
そうして森の中。
さすがに暗い。
何か出そうな雰囲気。
「とりあえず、何で俺が選ばれた?」
「我が見える者だからだ」
わかんねえし……
「何で見えてると思った?」
「我の管理する世界とは肉体の世界と精神・魂の世界だからだ」
こっちもわかんねえ……
「我が汝の思うシルエットのようになってから何か考えてみよ」
そう言うと白虎は色をなくしシルエットになった。
――何を考えろってんだ?
――そもそも鬼ってどんな奴?
直後に白虎が再び色を持つ。
「『何を考えろってんだ? そもそも鬼ってどんな奴?』精神・魂の世界のお前が言っておったぞ」
「それって俺が考えてた……」
「つまり、肉体の世界の存在が心に念じた事が精神・魂の世界では口に出る言葉となる」
つまり、精神・魂の世界にいる存在は全て心の中をさらけ出しているのか。
……ん?
「精神・魂の世界では喧嘩ばっか起きないのか?」
「その心配はない」
自信を持って返答されたが、
「何をもってそんな事が?」
「何故なら、感情というのは肉体の世界が仕切り、記憶を精神・魂の世界で……というように肉体と精神・魂で役目が違うのだ」
なるほど、つまり肉体側で憤怒しなければ精神・魂側も憤怒しない。
記憶を精神・魂側が司るのなら、肉体側に情報を送れるということだ。
かといって一方通行というわけではないのだろう。
「理解しつつあるようだな」
「おぅ、けど意識はどっちが?」
「普通の者は肉体に宿す」
「普通?」
「我の場合は行き来させられるのだ」
つまり、肉体界と精神・魂界を行き来できる存在は意識も行き来できると……
「ところで、シルエットは俺だけに見えるんで相違ないな?」
「正確には“だけ”ではないがこの近辺では汝のみだろう」
「つぅと?」
「汝ら人間の中にも霊が見えるという者がいるだろう?」
いる。
って、ん?
ということはそいつらは精神・魂界の存在を見れて、んで幽霊ってのは精神・魂界の存在?
「死んで肉体のなくなった者の魂が残ることは稀にあり、その際にシルエットのみになるのだ」
「それじゃぁ、降霊というのは精神・魂界の対象を精神・魂界の己と変わらせる行為か?」
「精神・魂界の存在の言葉を聞くことができる者が代弁しておるだけだ」
ふりかよ!
「無論、できる者もおるが限りなく少なく、いなくなる年もある」
つまり自然発生する能力か。
「そういった能力は己自身に負荷を掛けるものだ」
「ふぅん…って、あれ? つまり俺はその能力者の枠に入っちまった訳か?」
「“入った”のではなく“入っていても自覚できなかった”のだろう」
生まれた時から持ってたってことか。
今まではシルエットに出会わなかっただけで、見れたってことか。
「それじゃぁ最後に聞くけど鬼ってのはどんな姿をしてるんだ?」
「角があり、牛の顔に蜘蛛の体をした……そう汝の後ろにある……」
「後ろ?」
何も……いや、シルエットがある。
形は牛鬼……
人生で最も速いだろう速さで走り出していた。
あれが鬼だ。
間違いなくアイツが鬼だ。
「って、おい、あんなのどうやって?」
「正にあれであったか」
「聞けよ!」
「小僧、待て!」
「誰が待つか!」
完璧に突っ込みへ回された。
いや、今はそんな事は関係ない。
「白虎、あれどうやって倒すんだよ!?」
「核を引きずり出し、破壊せよ」
「どうやって!?」
「金爪をやろう後は己で考えよ」
見るからに金属の爪。
丈夫そうなのに重さはない。
つうか……
――なんで超近距離武器?
せめて剣にして欲しかった。
「小僧、貴様の汚れた魂喰わせろ!」
「……?」
シルエットの衣を脱ぎ捨てる牛鬼。
瞬間、恐怖より疑問に似た怒りが勝る。
「俺は汚れてねえ…!」
打ち払われる爪。
半月の軌道を描き、牛鬼の角を落とす。
「小僧のその憎悪だ……」
角が生え始め彰に迫る。
「テメェは何も知らずに……」
爪が角を止める。
かなりの力が込められている。
「俺を語るんじゃねえ!」
再び振るわれる爪。
角を砕き、本体すらも砕いた。
そう思ったのも束の間。
鬼はシルエットとなって消失した。
「アイツ、殺す……」
それほどまでに憎い相手。
彰にとっての親父とはそんな存在。
「彰、少し落ち着くが良い」
「うるせえ!」
「汝の憎悪が鬼を生むのだぞ?」
その言葉を聞いても昇った血は下がらない。
「そろそろ明け方だぞ?」
明け方……
だからなんだ……
「皆騒ぎだすだろうな」
そういえば新入生キャンプの最中だった!
急いで部屋に戻る。
まだ誰も起きてない。
時間は5時。
「セーフ……」
「どうやら元に戻ったようだな」
「あ? 元?」
「汝の変わりようには驚いたぞ」
それだけいうと白虎はシルエットになっていた。
「あ、爪」
気になって右手も左手も見るが爪はシルエットになっている。
便利だな、と思いつつも先程までの自分を思い出す。
――アレは俺か?
いくらなんでもあそこまで怒るか?
「前にもあったな、こんな事……」
その全てが、自分を馬鹿にされた時。
それも、何かキーワードがあった。
「ッ痛!」
気づいたら手から血が流れていた。
――俺はどんだけ力いれてたんだ?
「朝ですか……」
ヤベッ、室長の声。
起きやがったんだ。
とりあえず、何かで手は隠さない、と……
「おや、白川君その手はどうしたんです?」
手遅れ……
「草垣の中に腕時計落としちまって、突っ込んだら手を切ったんだよ」
咄嗟の嘘。
コイツ気づいたか?
「夜中に外出するのは禁止の筈ですが……まぁ、見逃しましょう」
それだけでしおりを取り出して予定の確認をするのみだった。
それを見ながら彰は名前を思い出そうと躍起になっていた。
しかし、顔と名前が一致しない。
「黒井 天(くろい たかし)です」
人の顔をじろじろ見てたら名前を思い出そうとしてると思われますよ?そうつけて扉から部屋を出て行く。
先生の所か、ロビーで何かあるのだろう。
「アイツ、何者だ?」
「我は見えぬようだが、力はある」
「どういうこっだよ?」
「さあな」
シルエットからの声が消えた。
ちょうしのいい奴め……
「今日は雨天のため朝の体操は中止、代わりに朝食が15分早まりました」
室長が突然戻ってきたため、かなり驚いた。
と、ぞくぞくと部屋のメンバーが目を覚ます。
ガチャッと一斉に掛けられる眼鏡。
ザッと一斉に立つメンバー。
恐いっての。
「鬼が負の念を籠めたようですね」
天が鞄から木刀を取り出す。
何する気だよ……
……って鬼?
何で知ってる?
「弱いながら影気を持っておるのだ」
白虎が姿を現すのを驚きながら見ている天。
その隙に襲い掛かるメガネーズ。
「白虎見えてなかったのか?」
そしてそれらを爪で受け止める彰。
「能力者でしたか……」
「お前こそ……」
肩を並べてメガネーズに向き合う。
白虎はやはり観戦を決め込む。
対するメガネーズは数歩下がりフォーメーションを組む。
「縦4列……」
呟くと同時に動くのを確認する。
「天、俺に任せとけ」
そう言ったら意味を悟り天は下がる。
彰は爪を低く構え、足を引く。
それからすぐにメガネーズが迫る。
一番手が拳で殴り込んでくる。
それを引いていた右足で一番手の右足を蹴り転けさせる。
その直後目にはいるのは二番手が跳び箱を跳ぶような格好で飛んでくる光景。
「肩使えなくて残念でした」
右足を勢いよく引いて上体を上げると拳を腹に叩き込む。
三番手はスライディングをしてきたが倒れ込むように両手を腹に叩きつけ逆立ちをする。
その後の四番手、跳び蹴りしてくるのをカポエラーで迎撃する。
「中、上、下、上のコンビネーションなのはわかってた」
メガネーズから数歩離れ観察する。
「武道でも習ってたんですか?」
「習ってねえ!」
天がビクッと驚く。
知らず知らずに怒りが籠もったらしい。
「ワリィ……」
メガネーズに背を向けて、立ち去ろうとするが……
太陽が昇り始めたのか空が明るくなりだす。
それを見て少年は思っていた。
今日で最後にしよう……、と。
そして話は二日前に遡る。
4月18日 AM11:30
少年・彰(アキラ)は新入生キャンプをしにとある宿に来ていた。
当然沢山の人がきている。
まずは宿の支給された部屋にいき荷物を置いて指示された部屋に移動を始める。
その途中、宿の看板を見つけた。
特に何の変哲もない看板に目を引かれたのは看板の下にある木が龍に見えたからだ。
その際に『五行思想に於いて龍(青龍)は木だからな』などと考え宿に些か親しみを感じた。
のも束の間、一歩進んだら龍がただの変哲もない木に変わっていた。
『己の未熟を恨むべきか、木の紛らわしさに怒るべきか……?』と考え直しその場を後にした。
「では、これより新入生キャンプ開講式を始めます。そもそもこのキャンプの目的とは―――」
30分経過。
「皆さんには宿の方に失礼のないように―――」
更に30分。
「ではそれぞれの部屋に移りましょう。くれぐれも―――」
更に30分経過。
「以上に注意してこれからの三日間を過ごすように」
長いよ、挨拶ごときにこんなに時間かけないで、と生徒達は思っていた。
して、やっと部屋に入る事が出来たわけだが……
――ぱっとしないメンバーだなぁ……
退屈というのは時間の流れを遅く感じさせる。
沈黙というつまらない時間を要して、やっときた夕食の時間。
移動を開始するが、周りにはぱっとしないメンバーばかり集まる。
――あれか、俺は呪われてんだな
しかし、その方が都合が良くなったのが風呂の時間から。
何でもない移動の最中だ。
虎のようなシルエットが道の上にあった。
しかし、実際そこには何もなく、空間だけがあった。
――疲れてんのかな?
「そうだな、お前は憑かれている」
ビクッと体が跳ねる。
シルエットから声がした。
何事?
「案ずるな、お前に使命をやろうというだけだ」
ずいとシルエットが近づくと何か衣が脱げるように頭から白く色がつき始める。
「まずは初めましてと言うべきだな」
「おぅ、初めまして」
とうとう俺も頭がどうにかしたらしい。
しかも虎と話して……
虎の色は、基本的に黄色と茶色だったような……
んじゃ、目の前のコイツは?
白と黒、それに瞳が黄色くて……?
「白虎!?」
「さよう白虎だ」
西方を守護する獣の神。
「して汝の名は何と申す?」
「俺は白川 彰」
「では彰よ、汝にはこの土地に迷い込んだ鬼を討伐してもらう」
選択権なし。
どうせ退屈だったので受けようとは思っていたが選択権はほしかった。
――……ん? この地に迷い込んだ鬼?
――“この地に”?
「簡単に見つけられるの?」
「無理だな、我が管理する二つの世界を行き来する能力を持ったのだ、そう簡単に見つかるものでもない」
余計に絶望的。
つまり、俺は残り二日……いやほぼ一日だけで見つけ出し、処理……
「俺じゃなきゃダメ?」
「我を見た以上はそうなる」
秘密にするためか……。
寝れない夜を二日間は過ごすだろう。
とりあえず、今日はボチボチ消灯時間。
積もる疑問は後にしてひとまず部屋に戻ろう。
「後で外に出て来る」
それだけで白虎は意味を悟るだろう。
とりあえず部屋に戻る。
点呼はこの部屋の最も地味な室長がする。
先生の確認が済んで消灯する。
ここの室長は真面目なようで先生が出た直後に電気を消していた。
部屋のメンバー全員が真面目で消灯して僅か数分で寝ていた。
ようようと外に出る。
勿論部屋に何もしないわけにもいかないため布団を丸めて布団の中に詰めた。
「抜け出してきたようだな」
再びシルエットのようなものから出て来る白虎。
「そんじゃとりあえず森の方に行って話そうか」
「構わんぞ」
ということで森の方へと移動する。
無論先生などに見つからないように気をつけて。
そうして森の中。
さすがに暗い。
何か出そうな雰囲気。
「とりあえず、何で俺が選ばれた?」
「我が見える者だからだ」
わかんねえし……
「何で見えてると思った?」
「我の管理する世界とは肉体の世界と精神・魂の世界だからだ」
こっちもわかんねえ……
「我が汝の思うシルエットのようになってから何か考えてみよ」
そう言うと白虎は色をなくしシルエットになった。
――何を考えろってんだ?
――そもそも鬼ってどんな奴?
直後に白虎が再び色を持つ。
「『何を考えろってんだ? そもそも鬼ってどんな奴?』精神・魂の世界のお前が言っておったぞ」
「それって俺が考えてた……」
「つまり、肉体の世界の存在が心に念じた事が精神・魂の世界では口に出る言葉となる」
つまり、精神・魂の世界にいる存在は全て心の中をさらけ出しているのか。
……ん?
「精神・魂の世界では喧嘩ばっか起きないのか?」
「その心配はない」
自信を持って返答されたが、
「何をもってそんな事が?」
「何故なら、感情というのは肉体の世界が仕切り、記憶を精神・魂の世界で……というように肉体と精神・魂で役目が違うのだ」
なるほど、つまり肉体側で憤怒しなければ精神・魂側も憤怒しない。
記憶を精神・魂側が司るのなら、肉体側に情報を送れるということだ。
かといって一方通行というわけではないのだろう。
「理解しつつあるようだな」
「おぅ、けど意識はどっちが?」
「普通の者は肉体に宿す」
「普通?」
「我の場合は行き来させられるのだ」
つまり、肉体界と精神・魂界を行き来できる存在は意識も行き来できると……
「ところで、シルエットは俺だけに見えるんで相違ないな?」
「正確には“だけ”ではないがこの近辺では汝のみだろう」
「つぅと?」
「汝ら人間の中にも霊が見えるという者がいるだろう?」
いる。
って、ん?
ということはそいつらは精神・魂界の存在を見れて、んで幽霊ってのは精神・魂界の存在?
「死んで肉体のなくなった者の魂が残ることは稀にあり、その際にシルエットのみになるのだ」
「それじゃぁ、降霊というのは精神・魂界の対象を精神・魂界の己と変わらせる行為か?」
「精神・魂界の存在の言葉を聞くことができる者が代弁しておるだけだ」
ふりかよ!
「無論、できる者もおるが限りなく少なく、いなくなる年もある」
つまり自然発生する能力か。
「そういった能力は己自身に負荷を掛けるものだ」
「ふぅん…って、あれ? つまり俺はその能力者の枠に入っちまった訳か?」
「“入った”のではなく“入っていても自覚できなかった”のだろう」
生まれた時から持ってたってことか。
今まではシルエットに出会わなかっただけで、見れたってことか。
「それじゃぁ最後に聞くけど鬼ってのはどんな姿をしてるんだ?」
「角があり、牛の顔に蜘蛛の体をした……そう汝の後ろにある……」
「後ろ?」
何も……いや、シルエットがある。
形は牛鬼……
人生で最も速いだろう速さで走り出していた。
あれが鬼だ。
間違いなくアイツが鬼だ。
「って、おい、あんなのどうやって?」
「正にあれであったか」
「聞けよ!」
「小僧、待て!」
「誰が待つか!」
完璧に突っ込みへ回された。
いや、今はそんな事は関係ない。
「白虎、あれどうやって倒すんだよ!?」
「核を引きずり出し、破壊せよ」
「どうやって!?」
「金爪をやろう後は己で考えよ」
見るからに金属の爪。
丈夫そうなのに重さはない。
つうか……
――なんで超近距離武器?
せめて剣にして欲しかった。
「小僧、貴様の汚れた魂喰わせろ!」
「……?」
シルエットの衣を脱ぎ捨てる牛鬼。
瞬間、恐怖より疑問に似た怒りが勝る。
「俺は汚れてねえ…!」
打ち払われる爪。
半月の軌道を描き、牛鬼の角を落とす。
「小僧のその憎悪だ……」
角が生え始め彰に迫る。
「テメェは何も知らずに……」
爪が角を止める。
かなりの力が込められている。
「俺を語るんじゃねえ!」
再び振るわれる爪。
角を砕き、本体すらも砕いた。
そう思ったのも束の間。
鬼はシルエットとなって消失した。
「アイツ、殺す……」
それほどまでに憎い相手。
彰にとっての親父とはそんな存在。
「彰、少し落ち着くが良い」
「うるせえ!」
「汝の憎悪が鬼を生むのだぞ?」
その言葉を聞いても昇った血は下がらない。
「そろそろ明け方だぞ?」
明け方……
だからなんだ……
「皆騒ぎだすだろうな」
そういえば新入生キャンプの最中だった!
急いで部屋に戻る。
まだ誰も起きてない。
時間は5時。
「セーフ……」
「どうやら元に戻ったようだな」
「あ? 元?」
「汝の変わりようには驚いたぞ」
それだけいうと白虎はシルエットになっていた。
「あ、爪」
気になって右手も左手も見るが爪はシルエットになっている。
便利だな、と思いつつも先程までの自分を思い出す。
――アレは俺か?
いくらなんでもあそこまで怒るか?
「前にもあったな、こんな事……」
その全てが、自分を馬鹿にされた時。
それも、何かキーワードがあった。
「ッ痛!」
気づいたら手から血が流れていた。
――俺はどんだけ力いれてたんだ?
「朝ですか……」
ヤベッ、室長の声。
起きやがったんだ。
とりあえず、何かで手は隠さない、と……
「おや、白川君その手はどうしたんです?」
手遅れ……
「草垣の中に腕時計落としちまって、突っ込んだら手を切ったんだよ」
咄嗟の嘘。
コイツ気づいたか?
「夜中に外出するのは禁止の筈ですが……まぁ、見逃しましょう」
それだけでしおりを取り出して予定の確認をするのみだった。
それを見ながら彰は名前を思い出そうと躍起になっていた。
しかし、顔と名前が一致しない。
「黒井 天(くろい たかし)です」
人の顔をじろじろ見てたら名前を思い出そうとしてると思われますよ?そうつけて扉から部屋を出て行く。
先生の所か、ロビーで何かあるのだろう。
「アイツ、何者だ?」
「我は見えぬようだが、力はある」
「どういうこっだよ?」
「さあな」
シルエットからの声が消えた。
ちょうしのいい奴め……
「今日は雨天のため朝の体操は中止、代わりに朝食が15分早まりました」
室長が突然戻ってきたため、かなり驚いた。
と、ぞくぞくと部屋のメンバーが目を覚ます。
ガチャッと一斉に掛けられる眼鏡。
ザッと一斉に立つメンバー。
恐いっての。
「鬼が負の念を籠めたようですね」
天が鞄から木刀を取り出す。
何する気だよ……
……って鬼?
何で知ってる?
「弱いながら影気を持っておるのだ」
白虎が姿を現すのを驚きながら見ている天。
その隙に襲い掛かるメガネーズ。
「白虎見えてなかったのか?」
そしてそれらを爪で受け止める彰。
「能力者でしたか……」
「お前こそ……」
肩を並べてメガネーズに向き合う。
白虎はやはり観戦を決め込む。
対するメガネーズは数歩下がりフォーメーションを組む。
「縦4列……」
呟くと同時に動くのを確認する。
「天、俺に任せとけ」
そう言ったら意味を悟り天は下がる。
彰は爪を低く構え、足を引く。
それからすぐにメガネーズが迫る。
一番手が拳で殴り込んでくる。
それを引いていた右足で一番手の右足を蹴り転けさせる。
その直後目にはいるのは二番手が跳び箱を跳ぶような格好で飛んでくる光景。
「肩使えなくて残念でした」
右足を勢いよく引いて上体を上げると拳を腹に叩き込む。
三番手はスライディングをしてきたが倒れ込むように両手を腹に叩きつけ逆立ちをする。
その後の四番手、跳び蹴りしてくるのをカポエラーで迎撃する。
「中、上、下、上のコンビネーションなのはわかってた」
メガネーズから数歩離れ観察する。
「武道でも習ってたんですか?」
「習ってねえ!」
天がビクッと驚く。
知らず知らずに怒りが籠もったらしい。
「ワリィ……」
メガネーズに背を向けて、立ち去ろうとするが……
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プロフィール
HN:
時流
年齢:
32
性別:
男性
誕生日:
1992/12/07
職業:
学生
趣味:
小説を書く
自己紹介:
時流です。
突然、古臭い言葉遣いになったり、暴走します。
でも、最低限のマナーを守るようには勤めてます。
それに小説&絵をかきます。
どちらも下手ですが、頑張ってHPにupします。
よければ見てやってください。
突然、古臭い言葉遣いになったり、暴走します。
でも、最低限のマナーを守るようには勤めてます。
それに小説&絵をかきます。
どちらも下手ですが、頑張ってHPにupします。
よければ見てやってください。
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